2009-03-01から1ヶ月間の記事一覧

夢破れて…。  2009/3

私の記憶にある絵との付き合い、それは私が絵を描き出した頃の懐かしい思い出とともにある。 小学校三年生の頃だったろうか、少年雑誌にのっている挿絵を模写している姿だ。愛馬の手綱をとる楠正成が描かれているものであった。馬の顔がうまく描けなくて、何…

はじめに・奈良町に定住

このストーリィは大正二年生まれの父石井幸夫が生前、八年間の時間をかけ明治時代から平成にかけてのわが家の歴史を記したもので、聞いていたことや自分が経験したことをノートに書き残したものを、息子である私石井照洋が整理したものです。 ま え が き 倅…

出生から少年期まで・関東大震災・貧苦の中で

出生から少年期まで 私は大正二年七月二十三日の生まれだが翌年には第一次世界大戦が起こり、日露戦争終結後九年目の年回りだが国の財政は悪化し不景気で、わが家も小作農家でありその日その日をやっとの思いで暮らす一般の家庭と変わりはなかったが、幸い父…

母の生家と父・二百三高地、白襷隊

母の生家と父 母ツルの実家の父、加藤定蔵と言う人は文久終わりか天保の初めに生まれた人のようで明治維新のときは二十二〜二十三歳だったろうということである、故郷は越後の新発田で五万三千石の大名、溝口藩主の家臣の子弟であった。姓は赤松氏ということ…

屈辱と謝罪・自信・決意・

屈辱と謝罪 やがて第三十六銀行の頭取石田某なるひとが工場へ乗り込んできた。氏は専務取締りとして工場の経営その他一切の権限を収め、会社再建を全株主(創業時からの総支配人及び相談役等)に申し渡すとともに、男子従業員全員及び主だった古参工女、養成工…

独立・暗い時代・田奈部隊

独 立 そこで私は、次男坊の俺はもうこれ以上家にとどまる必要もない、ゆくゆくは独立して一家を構えなければならないと考え、早急に働くところを物色していたが当座の準備金がいる。そこで同じ村の若い人たちと一緒に資産家の三澤藤太さんの屋敷の宅地造成…

見合い・所帯・兄の結婚・貧しい所帯・戦時下・戦場からの手紙

見合い 同じ年の二月下旬、思いがけない人から結婚話が私に持ち上がったが、兄がまだ独身で野戦病院に入院中のことでもあり、「弟の私が兄より先にそのような話は受けられない」と断ったのだが、父母の方が乗り気になりその話を受け入れた。醜男(ぶおとこ)を…

長子誕生と俊雄の死・敗戦・裏切り

長子誕生と俊雄の死 しばらくして、兄俊雄が健康を取り戻したので、兄嫁ヒロさん、父母、わたしたち夫婦もひと安心と言うことになった、間もなく兄嫁も予定日を迎え無事に男児を生んだ。祖父になる仁太郎は内孫が男だったので大いに喜び、大切に所持していた…

ひらめき・庄三郎さんの遺言書

ひらめき 心の底からありがたかった、これで助かった。 アー良かった、無理を承知で一か八かあたって砕けろだ、駄目ならまた何か考えればよい、そんな思いが届いたような気がした。私はあらためて井上博良さんに深々と頭を下げ、それまでの非礼を詫びたが、…