遠い日の思い出

●まきちゃん
 障害者病棟で入院をしている女の子です小二でした。
 交通事故で右足を膝下から失いました。
 松葉づえを使う訓練をしていました。
 ぼくは一人っ子なので妹のように可愛いと思いました。
 この病棟には小学生もケッコウいましたが、
 話をしたのはこの子だけです。
 ヒマをもてあました時などよく行きました。
 その辺はまだまだおおらかな時代でした。
 ぼくより早く退院していきました。


          

        




●Kさん
 眼科の隣のベッドのお兄さんでした。
 全盲になってしまった人で何でそうなったのかは、
 聞いたことがありませんが優しい人で明るい人でした。
 入院も長く病院での暮らし方など話してくれました。
 白い杖をつきながら器用に歩きます、
 ラジオの「君の名は」というのが大人気の時で
 その時間になるとみんなラジオのあるところに行ってしまいます。
 kさんもみんなと一緒にラジオを楽しみにしていました。
 K牛乳という会社の社長の長男だといっていました。



          

        


●Sさん
 看護婦さん、今はナースというのでしょうか?
 私はなついてこの人の後をついて歩いていました。
 いろいろな病棟もこの人の後についていったからです。
 長いあいだの入院でしたのでみんなと仲良くなりました。
 Sさんはとても優しくしてくれました。
 ぼくが、後をくっついていっても何も言いませんでした。
 仲のよい先生がいることを知りました。
 ある時、一人でテニスコートのそばを歩いていたら、
 Sさんとその先生がとても楽しそうにテニスをしていました。
 何か声をかけることがいけないような雰囲気がありました。
 ぼくはそっと見つからないように病室に帰りました。
 退院する時、離れたくないという寂しい思いをしました。



          
         




●W先生
 私の目の手術をしてくれた医師です。
 優れた評判の先生だそうでした。
  部分麻酔での手術だったのでジャリジャリという
 目を切る音が聞こえます、とても不安で、気味が悪かった。
 手術の後は三時間ごとにペニシリンをお尻に打ちます。
 ペニシリンはとても痛い注射です、それの太いのを打ちます。
 お尻はコチコチになり打つ場所を変えながら打たれます。
 そして両目ともぐるぐる巻きのまま二週間の安静。
 片目を巻いて一週間の安静がありました。
 おしっこやウンチを寝たままするのがとても嫌でした。
 二度目の手術もW先生がやりました。
 手術の後の長い安静が辛かった思い出です。